骨に溜まった髄液は、そう簡単に減るものではなく、
その分入院が長引いた。
自由に動くことができたので行動の不自由はないはずだが、
入院生活はやはり退屈だった。
病院の中で自由に出入りできる場所には限りがあり、
脳神経外科と外来エリア以外は出入りが禁じられていた。
自分でWiFiルータを持ち込み、タブレットで映画を見たり、
音楽を聴くこともできたが、家で寛ぐ場合とは違い退屈なものだった。
結局、3週間の入院後、退院した。
退院時も骨に髄液は溜まっていたが、感染症の恐れがない程に減っていた。
退院前には、
手術で腫瘍は取り切れてこれで一生大丈夫、
退院後は飲酒も大丈夫、
飛行機は頭に髄液が溜まるのでしばらくNG、
退院後は年に1回 MRIをとり、10年様子を見ること、
等の話を先生から聞いた。
聴力の方は落ちていた。
集中治療室でも、看護師さんに右耳の聞こえを確認されていたが、
その時からあまり聞こえなくなっていた。
術後の聴力検査の結果では100dBでやっと聞こえていた。
また、聞こえるといっても正常な耳と同じ聞こえ方をすることはなく、
ジージーザーザーと聞こえる。
屋外や駅などの騒めきがある中では、ザーッとか、ピピピッとか、
謎の音がしてくる。
室内の小さな物音には、キーンと聞こえてきたり、
音がちゃんと認識できていない印象。
先生によると、術後 1年は、良くも悪くも変わる可能性があるそうで、
半年たった今でも日によって聞こえ方は異なる。
まったく聞こえない訳ではないので、気配を感じる事はできるし、
意外と、正常な左耳のカバー範囲が広いので、
静かなところだと右側から話しかけられても気付けたりする。
ただ、集中している時に右側から話し掛けられると気がつけない。
幸い、目は見えるので、右サイドを時々確認したり、
注意を向けておくことで危ない目にあったことはない。
だんだん順応していくのだと思う。